火曜日, 1月 14, 2014

極私的創世記 第2章

主なる神はヒトを連れて行ってエデンの園に置き、これを耕させ、これを守らせられた。
イヌは寝てばかりで何の役にも立たなかったので、ヒトは朝に夕に勤勉に働いた。

主なる神はそのヒトに命じて言われた、「あなたは園のどの木からでも心のままに取って食べてよい。しかし善悪の木からはこれを取って食べてはならぬ。それを取って食べると、きっと死ぬであろう」。

さて主なる神が造られた野の生き物のうちで、ネコが最も狡猾であった。ネコはヒトに言った、「善悪の木の実を取って食べるなと、ほんとうに神が言われたのですか。」

ヒトはネコに言った、「神はその木の実を食べると死ぬと言われました」

ネコはヒトに言った、「あなたがたは決して死ぬことはないでしょう。それを食べると、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです」。

そこでヒトが見ると、その木はいかにも好ましかった。それでヒトはその実を取って食べた。
このようにして、ヒトの目は開かれ、それで自分が裸であることを知った。そこで、ヒトは、ネコの毛を剥いで身にまとった。

そよ風の吹くころ、ヒトは園を歩き回られる神である主の声を聞いた。それでヒトは、神である主の御顔を避けて園の木の間に身を隠した。

神である主は、ヒトに呼びかけ、仰せられた。「あなたは、どこにいるのか。」

ヒトは答えた。「私は園で、あなたの声を聞きました。それで私は裸なので、恐れて、隠れました。」

すると、仰せになった。「あなたが裸であるのを、だれがあなたに教えたのか。あなたは、食べてはならない、と命じておいた木から食べたのか。あなたは、なんということをしたのか。」

ヒトは答えた、「ネコがわたしをだましたのです。それでわたしは食べました」。

主なる神はネコに言われた、「おまえは、この事をしたので、すべての家畜、野のすべての獣のうち、最ものろわれる。おまえは一生、満ち足りることがないであろう」。

さらにヒトとイヌとネコに言われた、「おまえたちは罪を犯したので、罰として名前を変えなければならない。ヒトを犬と、イヌを猫と、ネコを人と呼ぶことにする。そして互いに反目しながら一緒に暮らすだろう」

主なる神は、彼ら犬という名のヒトと、猫という名のイヌと、人という名のネコをエデンの園から追放し、のろわれた地で暮らさせることにした。

だから、犬は善悪を知る上に勤勉であり、猫は寝てばかりで役に立たない。そして毛を失った人は相変わらず狡猾で、満足というものを知らないのであった。



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