木曜日, 2月 04, 2010

連載企画 2人の蜜月物語(1) -小公女カイラ-

彼女は,自分の出自に関しては,口を閉ざして語ろうとしない.(他のことも一切しゃべらないが)
一応,異国のとある農家で生を受け,幼年時代を過ごしたことになっているが,その所作の端々に,生まれの違いを感じてしまうのである.

例えば,彼女はよく腹を見せる.
俗に言うアラレもない姿で,見てるこっちが恥ずかしくなるのだが,当の本人にはそれを恥ずかしがる気配が毛ほども無い.貴婦人は,自分では着替えをしないので,人に裸を見せるのが平気だと聞いたことがあるが,彼女の場合も,どこかそういう無神経と紙一重の鷹揚さを感じさせるところがある.

また,立派に成人し母にもなった今でも,ささっと居間の片隅で用を足して,私たちの度肝を抜くことがある.「したい時にするのよ.後は始末しといてね」的なあっぱれ不遜な態度は,とても一般庶民の理解の及ぶところではない.

思うに彼女は,今でこそ単身異国のファームに身を寄せてはいるが,実は何か極秘の事情で没落&離散した,富貴な家の出ではないだろうか?
ヨーロッパ辺境の王族の末裔とか.
うん,きっとそうに違いない.

そんな彼女にとって,日本の継母Hiroの躾はさぞや厳しいことだろう.
それでも,持ち前の明るさで,毎日を気丈に過ごしている.
ちょっと心が狭すぎる嫌いもあるが,持って生まれた気位の高さと考えれば,それも充分理解できるのである.
 

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