水曜日, 7月 03, 2013

あたし、実は・・・なんです

先日、近所のスーパーでやっすい輸入肉を買ってきて、炭焼きにした。
やっぱ、おいしいです、ステーキ。
脂っこくなった口中をビール(まろはコーラ)で洗って、次の一片にかぶりつくときとか、皿に残った肉汁に、炊き立てのご飯を絡めて、わしわしと掻きこむときとか。
我ながら意地汚いのですが、皿に屈みこむようにして、あっという間に平らげました。

そのとき、ふと思いつきました。
この食べ方には、ロールモデルがある。。。


まだ小学生だったと思うのですが、一冊のH本を手に入れ、目を皿のようにして読んでいたことがあります。
宇能鴻一郎大先生の御著書。

本当は、ビニールに包まれた怪しい雑誌の類が欲しかったのですが、さすがに近所の本屋でエロ本コーナーに近寄る勇気は無く、小説本の棚にあったその本を、すまし顔で、その実、全身の血が逆流するような思いで買いました。

古い鞄に隠したその本を、こっそり取り出しては何度も何度も読んだ。
それなのに、今も覚えているのは「あたし、実は、好色なんです」みたいな文体くらいで、題名もストーリーもHシーンも完全に忘れてしまっている(本当に!)。
頭がオーバーヒートして、記憶が飛んでしまったのかもしれない。
そんな中、ただ一つ覚えてるのが、若夫婦がステーキを食べるシーン。

ある章の冒頭、仕事帰りの旦那が団地に帰ってきて、いよいよムチムチプリンの新妻といたされるわけですね、と期待してると、おもむろに分厚い牛肉を焼きだしたりするわけです、これが。
コラーッ、食事くらい外ですませてこんかい!とヤキモキする読者を尻目に、肉の焼き加減がどうの、塩の種類がこうの、残った脂がやあのと、グルメ系うんちく話が延々と続く。
結局、ビールを飲んだ新妻が、美味しさのあまり目尻に涙を浮かべたところで、その章は終わってしまう。

そんなところ、小学生には退屈だったと思うのですが、今でもかなり覚えています。
「おいしいステーキの物語」が、どこか心の琴線に触れたのでしょう。

結局、そのとき頭の中に構築した幻想の味を、何十年たった今も反芻していたわけです。
「人は物語の中でしか生きられない」という言葉を身に染みて納得した瞬間でした。
 

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