朝,出張先のホテルで備付のテレビをつけると,「ダビンチの残したスケッチ(攻城用の移動式跳ね橋)から実物を再現する」番組をやっていた.
おもしろいので,つい見入ってしまった.
でかくて元気で小汚いナリをした,いかにもアメリカ人という5~6人の男たちが集まって,一週間ほどで完成させる.その一部始終をテンポ良く見せていく.
そのうち,ひときわ声のでかいじーさんの担当する部分がことごとく不出来で,周囲と揉めるようになる.ただ単に板の長さを揃えるだけの作業で,2cmも狂いが出てしまう.
「一体どうやったらこんなに狂うんだ!?」
他のメンバーが沈痛な面持ちで部品を囲む.
傑作なのはこのじーさん,誰がどう見てもヘタクソなのに,自分の腕に自信を持っている.
不手際を指摘されると,非を認めるどころか大声で反論する.
その言い訳がふるっている.
「ここは寸法が狂っても大丈夫なんだ」
「この道具で精度が出ないのは当然だ」
「俺が科学的に説明してるのにリーダーは聞こうとしない」
「地面がデコボコなんだから車輪もデコボコで良いんだ」
「この寸法でもできるはずだ.全体の設計を変えようゼ」
「俺たちは兵器を作ってるんだ.アートじゃない.動けば良いんだろ?」
いつもじーさんと口論になるリーダー各の男がインタビューに応える.
「各部品はできるだけ精巧に作りたいんだ.一見不必要でも,そうしておくと後になっていろいろ応用が効くからね」
そんな含蓄のある言葉を,じーさんはガハハハと笑い飛ばし,次々に部品製作にとりかかって行く.
やる気と体力は人一倍なのだ.
で,プロジェクトは失敗するかと思いきや,無事,動作試験に成功する.男たちは念願の「戦争ごっこ」を楽しみ,お決まりのハイタッチとハグで成功を祝う.
全部やらせのシナリオだと思うんですが,結構感動しちゃいました.
人の営みというものがうまく凝縮されている.
目的を一にした仲間が集まること,ただしその目的の意味はよくわからんこと,不快な他者と共存すること,死者(先人)と対話すること,などなど.
「没後数百年にできた建造物を見たら,ダビンチは喜んだだろうなぁ」なんて想像すると,ちょっとジンと来る.
で,番組が終わって時計を見たら8:55AM.
あら?
確か今日の会議は9時から...
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