るぢ君は、前の持ち主のところでは車に乗せられて仕事場に行っていたのだろう。
ドアを開けると飛び乗ろうとするし、車で出かけようとすると、犬エリアを飛び出して伴走してくる。
今日も、飼料のオカラを引き取りに車を出したのだが、家から百メートルほど走ったところで、バックミラーに何やら黒い影が。。。全身をバネにして、それはそれはうれしそうに追いかけてくる。
そのとき突然、あることを思い出した。
まだ小さかったころ、やはり車の中から、追いすがる犬を眺めていたことがある。
確かに自分で体験したことなのに、そのときまで完全に忘れていた。
事情は覚えていない。
多分、迷い込んできた野良犬をしばらく飼っていて、でもやっぱり家には置けないとか何やらで、父の運転する車でどこかに捨てに行った帰りだったんだろう。
あるいは、飼い犬が産んだ子犬だったかもしれない。
その辺の記憶はまったくあいまいだ。
ただ、土ぼこりの中を駆けてくる犬の必死な様子と、乗車していた家族(父、母、兄)がそれを見て笑っていたことが印象に残っている。
それが幼い心では持ち堪えられなかったので、半世紀近くも記憶が封印されていたのかもしれない。
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