木曜日, 2月 24, 2011

ディスカバリー・チャネル

朝,出張先のホテルで備付のテレビをつけると,「ダビンチの残したスケッチ(攻城用の移動式跳ね橋)から実物を再現する」番組をやっていた.
おもしろいので,つい見入ってしまった.
でかくて元気で小汚いナリをした,いかにもアメリカ人という5~6人の男たちが集まって,一週間ほどで完成させる.その一部始終をテンポ良く見せていく.

そのうち,ひときわ声のでかいじーさんの担当する部分がことごとく不出来で,周囲と揉めるようになる.ただ単に板の長さを揃えるだけの作業で,2cmも狂いが出てしまう.
「一体どうやったらこんなに狂うんだ!?」
他のメンバーが沈痛な面持ちで部品を囲む.

傑作なのはこのじーさん,誰がどう見てもヘタクソなのに,自分の腕に自信を持っている.
不手際を指摘されると,非を認めるどころか大声で反論する.
その言い訳がふるっている.

 「ここは寸法が狂っても大丈夫なんだ」
 「この道具で精度が出ないのは当然だ」
 「俺が科学的に説明してるのにリーダーは聞こうとしない」
 「地面がデコボコなんだから車輪もデコボコで良いんだ」
 「この寸法でもできるはずだ.全体の設計を変えようゼ」
 「俺たちは兵器を作ってるんだ.アートじゃない.動けば良いんだろ?」

いつもじーさんと口論になるリーダー各の男がインタビューに応える.
「各部品はできるだけ精巧に作りたいんだ.一見不必要でも,そうしておくと後になっていろいろ応用が効くからね」
そんな含蓄のある言葉を,じーさんはガハハハと笑い飛ばし,次々に部品製作にとりかかって行く.
やる気と体力は人一倍なのだ.

で,プロジェクトは失敗するかと思いきや,無事,動作試験に成功する.男たちは念願の「戦争ごっこ」を楽しみ,お決まりのハイタッチとハグで成功を祝う.

全部やらせのシナリオだと思うんですが,結構感動しちゃいました.
人の営みというものがうまく凝縮されている.
目的を一にした仲間が集まること,ただしその目的の意味はよくわからんこと,不快な他者と共存すること,死者(先人)と対話すること,などなど.
「没後数百年にできた建造物を見たら,ダビンチは喜んだだろうなぁ」なんて想像すると,ちょっとジンと来る.

で,番組が終わって時計を見たら8:55AM.
あら?
確か今日の会議は9時から...
 

金曜日, 2月 18, 2011

天啓

まだ十分寒いと思うけど,ちょっと陽だまりができると,犬たちは気持ち良さそうに寝そべっている.
窓越しに彼らを眺めていて,ふと,「大→犬変換」というアイデアがひらめいた.
さっそくやってみる.

 決算犬処分
 犬入り満員
 いちご犬福
 犬急ぎ
 犬学芋
 犬目に見る
 犬部分
 絶犬
 無限犬
 犬騒ぎ
 巨犬な赤字
 犬泥棒
 誇犬妄想
 犬騒ぎ
 犬文字
 等身犬
 粗犬ゴミ
 犬活躍
  :

これは使えますね!
「何に?」が問題ですが.
 

火曜日, 2月 15, 2011

雪のち雪

久しぶりの出張で武蔵小杉なう.

この辺り,いつのまにか高層マンションが林立して,小綺麗なホテルとスーパーがオープンして,3つ目の最寄り駅(JR横須賀線)ができて,,,つい5年程前まで,ゴチャゴチャした町工場と飲み屋くらいしか記憶にないのに.
夜に出歩くと都心のビル街のよう.
今さらながら,東京のダイナミズムには圧倒されてしまう(神奈川だけど).

それにしても,ファームから離れてしばし雪と縁が切れると思ったのに,何の因果かここでも雪.
勘弁して欲しいなぁ.
じっとりした雨雪で身体の芯まで冷え込む.

都会人が雪で右往左往するのを雪国の人は笑うけれど,情状酌量の余地はあると思った.
アスファルト上で大勢の人に踏み固められると,ちょっとの雪があっという間にツルッツルの氷になってしまう.
田舎でいくら降っても,これほど歩き難くはならない.

雪害にも人が関わるところがいかにも都会らしいと,妙なところで納得しました.

日曜日, 2月 06, 2011

占領

いま,コタツの中に,すっかり興奮したちっちゃい男が潜んでいる.
足を突っ込むと,間髪入れずむしゃぶりついてくる.
強烈に痛い.

足入れられないコタツって,存在する意味あるんやろか?
 

火曜日, 2月 01, 2011

ちっちゃい男

不覚にも猫と暮らす羽目になってしまった.
犬馬羊山羊鳥合わせて53匹を養うという,ふしだらで傲慢な生活をしながらも,猫は飼わないと固く心に決めてきたのに...

別に猫が嫌いな訳じゃない.
むしろその反対というか,,,でも好きとかそーゆーのとも違って,何というか,猫には「弱い」のだ.

世界三大愚問の一つに「あなたは犬派?それとも猫派?」というのがあるが,これがなぜ愚問かというと,そもそも犬と猫とでは比較にならないからだ.
次元が違う.
「日本経済と蟻とではどちらが強いですか?」と同じくらい無意味な質問だ.

人対犬であれば,お互いを個性や長短所を持った個体として認識し,その関係を客観視することができる.どんなに心奪われたとしても,例えば蜜月物語みたいに自らを戯画化することで,比較的容易に平常心を保つことができる.

猫はだめニャン.
彼らは本能的に人の心の弱ったところを探りあて,その辺りをつんつん突きながら,結局そこに居ついてしまう.
見た目は四足動物だが,実はスピリチュアルな寄生虫なのだ.
口から食物を採ってみせることもあるが,あれは人の目を欺く擬態だ.
そうやって宿主を油断させておいて,矜持とか誇りとかガマンとか毅然とした態度とか決断力とかケジメとか,,,とにかくその辺の稀少な気質を,少しずつ溶かして摂取している.

そして猫に憑かれた人は,ある日,何一つ生産的なことをせず1日を終えようとしている自分を発見する.
不思議なほど後悔の念はわかず,むしろ満ち足りた気持ちで己を肯定できるのだ.
それが自前の感情ではなく,猫の心象風景が紛れ込んだものとも知らずに.

この段階ですでに8割方は回復不能である.
ああ,おそろしい.