水曜日, 12月 29, 2010

馬の分裂

話には聞いていたが,実際にこの目で見たのは初めてだ.

2週間前の早朝.
いつものように朝飼を済ませた後に,にしきを放牧場に連れていって放してやった.
母屋に引き揚げてくる途中,ふと違和感を感じて振り返ると,やつの様子がおかしい.
心もち顔を持ち上げ,前脚を前に,後ろ脚を後ろに伸ばして,しゃちほこばっている.
馬らしくないとゆーか,犬猫の伸びのような格好.

その姿勢のまま「ふひん」と鼻を鳴らすと,腹と胸の間の皮毛の色がすぅっと褪せた.
ちょうど,太さ10cmくらいの灰色テープが胴回りを一周したような案配だ.
さらに目を凝らしていると,その辺りの透明度がどんどん増していく.
お前はもののけ姫のしし神か?
朝日を通して遠くの竹林がうっすら透けて見えた.

不思議な光景に固まっていると,今度は後ろ肢を踏ん張ったまま前脚で地面を掻きだした.
透明になったところが軟化していて,ガラス細工のようにすぅっと伸びる.
「ああ,動いたらあかん!」
声に出して止める間もなく,目の前でぷつんと切れてしまった.

その後は,よく覚えていない.
自分が発狂したという恐怖に捉われて,記憶が欠けてしまったようだ.
気がつけば,上(前?)半身からは後ろ脚が,下半身から胸部と頭が再生していて,つまりは,目の前に小振りの馬が2頭立っていたというわけだ.
また失神しそうになったが,これが話に聞いていたセン馬(去勢した牡馬)の分裂増殖かと,埋もれていた知識を引っ張り出して,ようやく気持ちを落ち着かせることができた.

うーん,これから,どうしよう?
ま,生まれちまったものはしょーがない.
とりあえず,今,その2頭をバディとオリバーと名づけて飼育している.

・・・

白状します.
何を隠そう,,,実はこの話はウソなのです.
えっと,つまり,あまりにも良く出来た作り話なんです.
みなさんをすっかり騙してしまいましたね.
いやー,反省反省.
 

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