目を疑った.
やんごとなきカイラ姫が,食器を見たとたんツツツーっと涎を垂らした,いや,お垂らしあそばしたのだ.
なんという衝撃.
あれほど清楚で気丈で我慢強かった彼女が...
私が仕事で不在の間,継母と義娘の冷血コンビからひどい仕打ちを受けているに違いない.
うう,お痛わしや.
しかし,それにしても,,,卑しいではないか.
世が世なら,どんな山海の珍味を前にしようとも,物憂い風情を毛ほども崩さぬ深窓の令嬢であるはずのカイラが,こともあろうに涎とわっ!
それも,あごから床まで途切れず伝ったばかりか,キラリと反射までした,粘度と透明度を兼ね備えた見事な一本涎だ.
羞恥と食欲のガチバトル.
胃袋の勝利宣言.
家庭教師のロッテンマイヤーが見れば,その場で卒倒しただろう.
さて,どうしよう.
今,このことで一番傷ついているであろう彼女を問い詰めるのは,おそらく最低最悪の愚行だ.
継母に談判しても,鼻であしらわれるのが関の山だ.
う~んう~ん,どうしたらいい?
そうだ!とりあえず緊急処置せねば.
「よしよし,パパがオヤツをあげよう」
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